長谷寺・仏教美術の至宝Ⅳ―考古資料編―

2015年10月にリニューアルオープンした観音ミュージアムでは、「長谷寺・仏教美術の至宝」と題し、これまで3回の収蔵品展を開催してきました。本展はその第4弾にして完結篇となるもので、境内から出土した考古資料を展観するものです。

1923年の関東大震災で被災した観音堂は、戦中・戦後の困難な時期にもかかわらず復興造営が続けられ、それに伴い境内の発掘調査もおこなわれたことで、新たな考古学・歴史学上の発見が相次ぎました。戦時下の1943年に出土した大型板碑(鎌倉市指定文化財・旧重要美術品)や、戦後に出土した火葬骨、さらに平成の調査で発掘された鎌倉開府以前にさかのぼる土器類など、観音霊場として知られる長谷の地が、往古から人々の生活と祈りの場として機能していたことを示す資料群を総覧します。

木下阿貴「マントラ詠唱」ライブを開催します

開催中の特集展「雪山(せっせん)の国のみほとけ」では、館内BGMとしてマントラが流れています。マントラはサンスクリット語で「真言」を意味し、ヨーガの実践による心身の修養をめざすインド仏教やチベット仏教の一部の学派では、マントラを詠唱することが修行の一環として重視されてきました。

 

このたび、本展のクロージングにあたって、詠唱を担当してくださっている木下阿貴(きのしたあき)さんによるミニライブが開催される運びとなりました。

木下さんは、インドでヨーガとマントラの研鑽を積まれ、現在は藤沢市鵠沼のStudio Jyoti (スタジオ・ジョーティ)にてヨーガの指導に当たられています。

 

サンスクリット語の本格的なマントラを日本で聴ける数少ない機会です。学芸員による列品解説とあわせて、インド・チベット仏教の深遠な世界の一端をご体感ください。

 

イベント名:木下阿貴マントラLIVE

 

日時:2018年4月21日(土) 14:00~15:00

 

場所:鎌倉長谷寺 観音ミュージアム及び観音堂

 

プログラム:

14:00-14:20

「雪山(せっせん)の国のみほとけ」企画担当学芸員によるギャラリートーク

(観音ミュージアム2階企画展示室にて)

 

14:30-15:00 木下阿貴ミニライブ&トーク

(観音堂内陣にて)

 

料金:観音ミュージアム入館料(中学生以上300円/小学生150円)

※長谷寺入山料要別途

 

ライブを内陣(観音さま御宝前)で着席してご鑑賞になりたい方には、ミュージアム入館券ご購入時に着席整理券をお渡しします。(13:50より配布開始、先着20名様限定)

なお、整理券をお持ちでない場合は、立席でのご鑑賞となります。何卒ご了承ください。

学芸員のヨガ体験記

新年度が始まり数週間経ちましたが、皆さんいかがお過ごしですか?

新しい環境にもう慣れたという方もいれば、まだ馴染めず戸惑いを感じている方もいることでしょう。

一方で、変化の無かった人は、自ら新しいことに挑戦しようとしているのではないでしょうか。

 

現在好評開催中の特集展「雪山(せっせん)の国のみほとけ ― チベット・ネパールの現代仏画―」展ですが、観音ミュージアムでも始まって以来の初の試みを行なっています。

それは何かというと、館内にBGMを流して視覚に加え、聴覚からも楽しめる展示空間を演出しているのです!

そして、その流しているBGMというのが「マントラ詠唱」です。

「マントラ詠唱」というのは、サンスクリット語のお経に節をつけて、まるで歌のようにお経を唱えることを意味します。館内では、心地良いマントラ詠唱がチベットやネパールの現代仏画にリンクして、癒しを与えてくれる素敵な空間となっております。

 

そんな癒しのマントラ詠唱をされているのが鵠沼在住、ヨガ・マントラ講師をされている木下阿貴(きのしたあき)さん(以下「Akiさん」)です。

パートナーのChakiさんとともにご自宅に隣接するスタジオでヨガ教室を開かれています。

せっかくのご縁!そして、新年度新たなことに挑戦!ということで、初めてのヨガ体験のためにお二人のスタジオにお邪魔してきましたので、その体験記をまとめたいと思います。

 

JYOTI 看板

 

STUDIO JYOTI

 

こちらがヨガスタジオJYOTI(ジョーティ)。

小田急電鉄江ノ島線の鵠沼海岸駅から徒歩8分程の閑静な住宅街に佇むスタジオは、植物に囲まれていて、とっても落ち着ける雰囲気となっています。

 

スタジオを見渡すと、二人の人物の写真が飾られていました。

 

クリシュナ・マチャリア氏

 

デシカチャー氏

 

上の人物が、クリシュナ・マチャリア氏。何とも怪しい感じのおじさん…。

ですが、この方すごい方なのです!彼は、哲学や論理などあらゆる学問において学位を取得し、非常に優れた人だったそうです。いわゆる天才ですね。何にでもなれた人だったそうですが、そんな彼が、ヨガが下等な者が行なうものと見なされていた時代に、ヨガを教えたいと言い出したのだそうです。そんなことから彼は、“近代ヨガの父”、“師たちの師”などと言われているすごい方なのだそうです。

 

そして、下の人物がデシカチャー氏。彼は、クリシュナ・マチャリア氏の息子で、マチャリア氏の教えを受け継いでヨガを教えている方。Chakiさんの師匠に当たります。

そんなヨガの祖の教えを学んだChakiさんのお話の中で、感銘を受けた内容を皆さんにもおすそ分け…!

 

まずヨガを行なう上で一番大切なこと。それは「呼吸」です。

Chakiさんに「肺は特別な臓器なんだけど、なんで特別か分かる?」「深呼吸してみて」と問いかけられました。

恥ずかしながら私には分からず…

答えを聞いて納得。肺は唯一、自分の意思でコントロールできる臓器だとのこと。

他の臓器は自動で動いているのが普通ですが、肺は唯一簡単に自動からマニュアル運転に切り替えることができるのです!

確かに深呼吸すると肺が膨らんで胸が張り、吐くとしぼむ感覚が分かりますよね。

そのため、自分でコントロールできる臓器が行なう「呼吸」という行為は、非常に大切なものなのだそうです。

 

またChakiさんは、「呼吸」である程度マインド(精神)もコントロールすることが可能だと言います(※1)。

そのためにはまず、自分の「呼吸」を“見守る”ことが大切なのだそうです。

仰向けになってお腹に手を置いて、何も考えず、何も意識せず呼吸を見守ります…

呼吸が早ければ緊張、不安のあらわれ、逆にゆっくりだったらリラックス…

こうして呼吸から自分のマインドの状態を理解します。

それから自分の状態にあったヨガのポージングをとり、そのポージングに合わせた呼吸を行なうことで、マインドを落ち着かせたり、元気にさせたりすることが可能になるそうです。

 

因みに、ヨガのポージングや呼吸は、自分が出来る範囲で良いとのことです。

Chakiさんが「前屈をやってとお願いすると、人って必ず無理して膝におでこをつけようとしたり、地面に手をつけようとしたりするけど、柔軟さが人生の何の役に立つ?(笑)」と仰っていたのには、『確かに…(笑)』と笑ってしまいました。マイペースに行なうことが大切なのですね。

 

また、息を吐くときに呼吸に音をつけるとゆっくり吐くことができるとのこと。

ここでマントラが登場!!

ヨガの呼吸は鼻から吸って、鼻から吐くのが基本だそうですが、鼻から吐く動作をマントラ詠唱に置き換えることでゆっくり吐くことができるそうです。

呼吸を見守りながら、とにかく自分のペースで…

息を吸って「Shantihi(シャンティヒ)」と息を吐く…(※2)

 

「愛をコントロールすることは難しいでしょ?信じて見守ることが大切。」「子どもを育てるとき、いけないことをしそうだったら、すぐだめ!と制御することがあるよね。でも、コントロールしたせいで逆にぐれちゃったり…子どもを信じて見守ってあげた方が、反抗しないのびのびした子に育ったりするケースもあるよね。それと同じことなんだ。」とChakiさん。

このお話を聞いて、無理してもっと長く息を吐こうとか意識せず、ありのままの今の状態を受け入れること。

そのために自分自身を“見守る”という行為が、如何に大切かがよく分かりました。

 

それではポーズをとっていよいよ実践です!

 

呼吸を見守りながら…

息を吸って~

 

「Shantihi~(シャンティヒ~)」

 

身体が伸びて、とっても気持ちいい!

意味を理解して動作を行なうと、より身体も心もリフレッシュできた気がしました♪

 

ヨガの終わりには、また仰向けになって呼吸を見守ります。

そして、Akiさんによる終わりのマントラ…

だんだん意識が遠退いt…

初めて訪れた場所でしたが、自分でもびっくりするくらいリラックスしてしまいました;;

 

ヨガやマントラにご興味のある方は、是非お二人のお教室に足を運んでみて下さい。

また、会期は残り少なくなりましたが、観音ミュージアムでもAkiさんの美しいマントラ詠唱を、チベットやネパールの現代仏画をご覧いただきながら、聴くことができます。

 

そして、さらに今回特別企画が…!

Akiさんのマントラ詠唱を生でお聴きいただけるマントラLIVEを4月21日(土)に開催することが決定いたしました!!

しかも観音堂内陣、ご本尊である大観音様により近い空間で開催されます♪

内陣でのご鑑賞は、13:50からミュージアムにご来館された先着20名様とさせていただきます。

 

当日はマントラLIVEに加え、学芸員による展示解説や、学芸員とAkiさんのトークLIVEもありです!

詳細は、トップページのお知らせ【木下阿貴「マントラ詠唱」ライブを開催します】をご確認下さい。

 

観音ミュージアム主催で行なうLIVE企画も初の試みで、学芸員一同わくわく半分、緊張半分といったところですが、精一杯頑張ります!

それでは、皆さんのお越しをお待ちしております!!

 

学芸員 H

 

________________________________

(※1)精神(英:mind)(サンスクリット語:citta)

(※2)「Shantihi」=「動じない」を意味する

ターラーをさがせ!-チベット仏画展の歩き方ー

春もたけなわとなり、観音ミュージアム特集展「雪山(せっせん)の国のみほとけ」の会期も終盤に差しかかってきました。

長谷寺が所蔵するチベット・ネパール仏画コレクションの初公開とあって、展示室内もエキゾチックなムードに包まれています。曼荼羅、来迎図、観音菩薩の版画など、一見すると日本の仏画とは「似て非なるもの」という印象を持たれるかもしれませんが、よく見ると同じ仏教圏の国・地域としてのつながりが見えてきます。

 

チベット仏教で人気の仏さま、《ターラー菩薩》。

「四仏母」とよばれる女性尊格のひとりで、観音菩薩の化身でもあります。観音さまの「母性」の象徴ともいうべきでしょうか。

ところで、このターラー菩薩は、椅子に腰かけて両足先を地面につけた「倚坐(いざ)」とよばれる坐り方をしています。これはターラー菩薩としては少し珍しい形式で、チベットや中国に伝わる伝統的なターラー菩薩の図像は、片膝を立ててゆったり坐った「遊戯坐(ゆげざ)」の形をとるものが多いのです。

 

《五仏曼荼羅》。ここにも、画面上方にターラー菩薩が描かれています。

眉間(みけん)と掌(てのひら)にも眼がある白色ターラーは、両足を組む結跏趺坐(けっかふざ)。

こちらの緑色ターラーは、右足を踏み下げた遊戯坐です。

(どこが緑でどこが白なの?と思われた方、手に持った花にご注目を!)

 

ちなみに、この遊戯坐という坐り方、鎌倉の仏像に詳しい方ならピンときたかもしれません。

有名な東慶寺の水月観音をはじめ、鎌倉地方で造られた一群の観音像に多くみられる形式なのです。遊戯坐が流行した背景については諸説ありますが、中世における新興都市であった鎌倉で、当時の国際的なトレンドであった宋風(そうふう=中国風)がいち早く取り入れられた結果であるとの見方が一般的です。鎌倉文化と大陸との結びつきを象徴するスタイルといってよいでしょう。

遠く時代を隔てた現代のネパールの仏画でもこの坐り方が見られるのはおもしろいですね。

 

 

さらに、ミュージアムで出会えるもうひとりのターラー菩薩。

こちらは担当学芸員自作の「ぬり絵」です。ここでも遊戯坐を採用してみました。館内で無料でお配りしていますので、お好きな色を塗ってお楽しみください!

 

「雪山(せっせん)の国のみほとけ ―チベット・ネパールの現代仏画―」は、4月22日(日)までの開催です。

 

(学芸員Mn)

 

 

 

 

学芸員によるミュージアムトーク【4月の開催日程】

展示の見どころを当館の学芸員がわかりやすく解説します。
参加を希望される方は、14時までに観音ミュージアムにお越しください。
皆様のご来館をお待ちしております。

【ミュージアムトーク開催日】
4月7日  (土) 14時~

4月14日(土) 14時~

4月21日(土) 14時~

4月28日(土) 14時~

各回30分程度

※都合により中止となる場合があります。