「長谷寺・仏教美術の至宝―絵画編―」に続く収蔵品展第3弾。長谷寺が所蔵する美術工芸品の展覧会を開催いたします。
当山を代表する金工品のひとつ、梵鐘。文永元年(1264)の銘をもつこの作品は、伝説に彩られた創建譚をもつ鎌倉長谷寺が、歴史の表舞台にはっきりと姿を現した時期を示す貴重な資料といえます。
当時の仏教界では、浄土宗・禅宗などの新仏教と並んで、古くからの仏教の内部でも革新運動がおこり、釈尊の教えの原点に帰ろうとする熱い気運がみなぎっていました。
なかでも、奈良・西大寺の叡尊(えいそん/えいぞん、1201-90)と、彼に師事した鎌倉・極楽寺の忍性(にんしょう、1217-1303)は目覚ましい活躍をみせました。当山には、そうした忍性との関わりを示唆する伝承も多く、極楽寺を中心とする真言律宗文化圏の影響下にあったことが推測されます。
本展では、第1章「鎌倉長谷寺の密教美術」にて、長谷寺における真言宗や真言律宗の足跡を示す密教法具の数々を一堂に展示します。あわせて、真言律宗でも重んじられた仏舎利信仰の隆盛を物語る舎利塔・宝塔をご覧いただきます。
続く第2章「懸仏」では、神仏習合を象徴する当山の至宝・十一面観音懸仏六面や、境内からの出土品など、数々の遺例を展示いたします。
最後に、第3章「荘厳と供養」において、神仏を敬うための多様な信仰用具をご紹介します。
中世都市・鎌倉に生きた人々の、篤き祈りを伝える名品の数々。時を超えて伝わる信仰の精華をぜひご堪能ください。
また、夏休み企画として、お子さま向けのワークシートを配布するほか、奈良国立博物館/読売テレビ様の格別の御厚意のもと、アニメーションDVD『笑顔のお坊さん忍性 すべては、母から始まった。』を館内にて特別上映いたします。あわせてお楽しみください。