開設から35年目を迎えた平成27年(2015)10月、長谷寺宝物館は記念事業として老朽化した施設の改修を行うとともに、これまでの寺宝の紹介だけでなく、長谷寺の本尊でもある「観音菩薩」を主題とした博物館、その名称も「観音ミュージアム」として新しく生まれ変わりました。
鎌倉長谷寺では、その悠久の歴史とともに伝世した什宝類を守るため、明治時代につくられた「宝物陳列所」を礎に、昭和55年(1980)に本格的な博物館施設として宝物館を開設しました。
「観音ミュージアム」は、これまでの事業を受け継ぎつつ、わが国に伝えられた仏教において、とりわけ多くの日本人に敬われた「観音菩薩」の教えを、よりわかりやすく伝えることを目的としております。
また、全国にはここ鎌倉三十三観音霊場をはじめ、西国・坂東・秩父観音霊場など多くの観音霊場が存在し、それぞれに、特色ある観音菩薩の教えが広められ、巡礼が盛んに行われています。「観音ミュージアム」の開設によって、「観音菩薩研究」をより深め、情報共有の場を構築し、観音信仰の発展に寄与できるよう努める所存でございます。
観音菩薩とは?
一般に「観音さま」と呼ばれる御仏の正式な名称は「観世音(かんぜおん)菩薩(ぼさつ)」または「観自在(かんじざい)菩薩(ぼさつ)」などといいます。
「菩薩」は、悟りを求めて修行する者を意味し、観音の他に地蔵菩薩や弥勒菩薩といった御仏も含まれます。
中でも「観世音」は世の中の救いを求める音声を自在に聞くという意味があり、あらゆる願いに応えるため、様々な姿に変化していったのが観音の特徴です。
収蔵品紹介
十一面観音菩薩立像(前立観音)
当山本尊の前に祀られていた像で、江戸時代の造立とみなされますが、納入された銘札から室町期に建立された旧像の再興仏のようです。右手に錫杖を持つ姿は長谷寺特有の形式で、「長谷寺式十一面観音」と呼ばれます。
本尊の来歴を考える上でも重要な資料です。
三十三応現身像鎌倉市指定文化財
『観音経』に説かれる観音菩薩の功徳には、衆生に応じてふさわしい三十三の姿(「応現身」または「応化身」などと呼ばれます。)に変化し救済するとされ、その姿を彫刻した群像です。室町時代の造立で、33体が揃って伝来するのは、全国的にも大変貴重なものといえます。
懸仏(全6面)重要文化財
長谷寺には長谷観音像が取り付けられた6面の懸仏が伝来しており、銘文から鎌倉時代末期から室町時代の優品とみられます。いずれも直径70センチを超える大型の懸仏で、当時の長谷寺が相当な規模だったと推測されます。
梵鐘重要文化財
当寺に伝世する文化財のなかでも、「長谷寺」の寺号が確認される最古の資料です。文永元年(1264)の銘をもち、鎌倉では常楽寺・建長寺についで三番目に古い梵鐘です。
長谷寺縁起絵巻神奈川県
指定文化財
江戸時代、当山の中興僧によって施入された絵巻物で、内容は、大和(奈良県)長谷寺の開創縁起です。全国で数点の遺例が確認されるなか、制作年(室町時代 弘治3年(1557))が判明する唯一の資料となります。