夏の博物館ってなんで寒いの?

みなさんは夏場に博物館・美術館を訪れた際、「なんでこんなに冷やしてるの?」とイライラに近い疑問を持たれたことはありませんか?
私も経験がありますが、最初に入ったときは「涼しい~!」と爽快な気分になるのですが、ゆっくり鑑賞していると汗が冷えてだんだん寒く感じてきますよね。
当館でもご来館されるお客さまからちらほらとそういったお声を頂戴しており、ご不便をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、これには理由がございまして…

そもそも博物館とは資料を収集・保管・研究・展示する施設で、全ては資料を中心に回り、主役は人間ではなく、資料になります。
中でも「保管」は、未来へいかに変化なく資料を残していくかが問われる学芸員の大切な仕事のひとつに当たります。

みなさんもご自宅にある「モノ」で、劣化を感じたことがあると思います。
椅子が軋むようになったり、本が黄ばんだり… 全てのモノのほとんどは、物理的・科学的・生物的要因で劣化、破壊されていきます。
博物館ではこれらの要因に対処していく訳ですが、夏場に冷房が効いているのは物理的要因に含まれる「温湿度の変化」を適正な数値に保つために行なっている対処のひとつなのです。
もちろん資料によって適正数値は変わってきますが、資料の適正な温湿度数値は人間のそれと比較してかなり低く設定されています。
そのため、夏場の博物館はかなり“ひんやり”しているのです。

お客さまにはご不便おかけして申し訳ございませんが、ご理解ご協力いただけると幸いです。
ご来館いただく際は、必ず上着などをご用意いただけると、快適なひとときをお過ごしいただけるかと思います。
それでも「寒い!」「上着忘れた!」という方は、ご遠慮なく仰ってくださいね。

学芸員H